Shima Shima English

エイメイ学院 / 明成個別 英語科講師のブログ

「女子力」という呪い

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 男女複数人でのある食事の場で、大皿のサラダが出された。そうすると、ある男性がトングを手に取って、みんなにサラダを取り分けようとした。

 

 

 そのとき、他のある男性が「ありがとう!!お前、『女子力』高いな~!!」と言った。

 

 

 

 

 

 この何気ない日常的な発言の中に登場した「女子力」という言葉には一体どんな意味があるのだろう??

 

 

 

 

 

   疑問を投げてみる。

 

 

 

 

 

 「女子力」という言葉を使った彼の頭の中には、おそらく「サラダをみんなに取り分けるのは女性の仕事だ!!なのに、男性である君がそれをやるなんて、なんて素晴らしいんだ!!!」というのが前提にある。

 

 

   そうでなければ、女子力」なんて言葉で彼の行動を形容したりはしない。

 

 

 

 

 

 例えば、ハンカチを持っている男性に対して、「女子力が高い」と言うのは、「ハンカチを持っているのは、清潔感に気を遣う女性であるはずなのに、男性であるあなたがそれを持っているなんて素晴らしい!!」ということ。

 

 つまり、暗に「女性は清潔であるべき」という前提がある。

 

 

 

 

 例えば、料理が得意な男性に対して、「女子力が高い」と言うのは、「料理が得意なのは女性であるはずなのに、男性であるあなたが得意だなんて素晴らしい!!」ということ。

 

 つまり、暗に「女性は料理が得意あるべき」という前提がある。

 

 

 

 

 

 「女子力」という言葉が、こんなにも危険な言葉だったなんて。

 

 

 日本人は性別に鈍感だから、人種の次元に置き換えると、その恐ろしさが分かる。

 

 黒人は差別の歴史を歩み、清掃業を主に仕事にすることが多くあった。

 

   もし心の底から熱心にトイレ掃除をしている白人がいたとして、彼に対して、「君、『黒人力』高いね~!!」と言う。「女子力」はこれに匹敵する。

 

 

 

 

 あまり「女子力」に関して違和感を感じないというのは、女性に対する差別がバッチリ染みついている、女性がそうするのは当然のことだ、という認識があるということだ。

 

 

 

 

 サラダを分けてくれた男性に対して、「女子力が高い」と言った彼は、もちろんそんな深いところまでは考えていない。

 

 

 しかし、重要な点は「無意識」で発言した、という点だ。

 

 

 つまり、「女性が~であるべき」という前提が知らず知らずの間に頭の中に刷り込まれているということ。それがどこから来たのかは分からない。親、友達、先生、CM、テレビ、教科書、漫画......。

 

 

 これはもはや個人の問題ではなく、日本社会全体にはびこっている問題である。

 

 

   当然のことのように、「女性は、ハンカチを持つべき、料理ができるべき、家事ができるべき、化粧をすべき、子育てをするべき、制服はスカートであるべき、体形は細くあるべき。、」と誰もがどこかで思っている。

 

 

   歴史が、社会が、作りあげた性神を。

 

 

 

 

 

 これは女性を苦しめ、現在でも日本の社会問題の中心的問題の一つを成す。

 

 

 

 

 

 しかし、問題は女性にだけではとどまらない。

 

 

 

 この問題の重要な点は、性神話は男性をも抑圧するということだ!

 

 

 

 例えば、なよなよした男性を見ると、「お前は女か!!」というのは、どこかで「女性はか弱いものだ」と考えるのと同時に、「男性は強く、たくましくあるべき。」と考える。

 

   だから、こんなにも卑劣な言葉が簡単にでてくる。

 

 

 なよなよしている男性の何がいけないのか?男性として生まれたなら、強くたくましく生きなきゃいけなのか。

 

 

 

 

 

 

 「女子力」という言葉は、あくまで褒め言葉として使われる。もちろん誰も、誰かを傷つけようとしてこの言葉用いることは少ない。

 

 

 

 サラダを取り分けるその行為に感謝すること自体は何も問題はない。

 

 

   しかし、その行為に対して「女子」という言葉をあてることに、日本社会の問題が垣間見える。

 

 

 

 この女性神話のバックグラウンドにある前提は、女性ばかりか男性も、はたまたその2項対立に当てはまらない人々をも苦しめる元凶になっている。

 

 

 

 

 ということは、私たちが私たち全員を苦しめているってことか。