ちょっと大仏がスキになる話
「これ、大仏作んないとヤバくね??」
時は奈良時代。
この国が自らを「日本」と名乗ってからまだ間もない頃、人々の暮らしは重い税や飢饉に耐え抜かなければならない苦しい日々であった。
時の権力者は聖武天皇。
彼もまた、生涯不運に見舞われた悲劇の君主であった。
彼の母親は皇族じゃなくて藤原氏の人間だったから、天皇に即位してから、貴族の間では、
「あいつは100%天皇家の血を引いてねー!!だから、天皇としてはふさわしくないだろ!!!!!なんなんだ、ほんとに!!!!!」
って不満があったらしい。
そんな不穏の中、事件は矢継ぎ早に起こる。
①ドロドロの冤罪事件
当時の政権幹部は、皇族のひとり長屋王(ながやおう) と、藤原氏の政界進出拡大を目論む藤原不比等(ふじわらのふひと)。このふたりは超スーパーエリート官僚で、皇族と貴族というバランスで収まっていた。しかし、不比等が先に他界してしまったことで、政権内のパワーバランスが崩れてしまう。
長屋王一強になっちゃって、一族拡大を図っていた藤原氏にとっては面白くない!!そこで事件を巻き起こすのは、不比等の4人の息子たち。笑
なんと、4人の息子たちは「長屋王が謀反を起こそうとしてます!!」と嘘をでっちあげる。長屋王は不比等4ブラザーズに無実の罪をなすりつけられた!!長屋王は冤罪で自殺に追い込まれる。(長屋王の変)
聖武天皇にとっては、政界ナンバー2のふたりを一気に失ったことになる。ただでさえ不安なのに。
聖武天皇:
「一気に2人もいなくなった。、え、この先やってける。、?」
②古代版インフルエンザ
その後、藤原不比等の4人の息子たち(以下、藤原4ブラザーズ)は、4人で聖武天皇の側近にまでのぼりつめて、さらに、藤原氏の女性を聖武天皇の奥さんにまでした。
「これで、藤原氏の時代だ!!!」と思われた。でも、大変なことが起こる。
当時の日本で、天然痘という感染症が流行ったんだ。その猛威は平城京にも届いて、なんと。、藤原4ブラザーズは全員、天然痘に侵され、死んでしまう!!!
当時の流行り病なんて、たたりか呪いのレベルで怖い。突然、原因不明の何かによって、次々に周りの人間が死んでいく。
聖武天皇:
「うそでしょ。? 4人一気にってことある?? おれの部下って死ぬ運命なの? てか、もう絶対次、おれ死ぬじゃん。まじか。」
③愚痴られたので戦争
空いてしまった4つのポストを埋めるために、新たに鈴鹿王(すずかおう) と 橘諸兄(たちばなのもろえ) という人たちが登用された。
残りの2席はどうしよっか、ということで、当時の唐からの帰国子女、吉備真備(きびのまきび) と 玄昉(げんぼう) のふたりがプラスワンゲストとして呼ばれた。当時のバイリンガル!!
しかし、これが事件を巻き起こす。
そのときちょうど九州への左遷をくらっていた藤原広嗣(ふじわらのひろつぐ) は、
「え、誰やねんそいつら。藤原一族のおれはこんなところにいるのに、あいつらだけ急にチヤホヤされて。えー、まじか。ないわー。」っていう趣旨のお便りを聖武天皇に送った。
政治も不安定、情緒も不安定な聖武天皇は、もうそういう些細なことには敏感だった。結果、九州に即出兵。
広嗣はただの愚痴のつもりだったのに、すごい勢いで政府軍が押し寄せてきて、あっけなく負けてしまった。(藤原広嗣の乱)
聖武天皇:
「あー、イライラする。なんでこんなに波乱万丈なの。一体どうしたら世の中が安定するんだ!?おれが悪いのか!?おれに天皇を務める能力が無いから、国が荒れるのか!?」
当時の考えでは、国が安定しないのは、その国を治める最高責任者である「天皇」に力が無いから、とされていた。
ただでさえ、正当な天皇後継者ではなかった彼の治世は、貴族の不満に加え、重税に苦しみ飢える庶民、長屋王の変→天然痘の猛威→藤原広嗣の乱と続く社会不安、他にも地震といった自然災害が連発するなど、国が安定することはなかった。
貴族の間では、「もう責任取って辞めた方がいいんじゃないの?」という雰囲気が漂う。
そして聖武天皇は、最後の砦、藁にもすがる想いで、苦肉の策を講じる。
聖武天皇:
「これ、大仏作んないとヤバくね??」
「もう、おれの力じゃどうにもなんないわ。仏様に救ってもらうしかないやん。おけ、やろう。」
こうして、奈良にある東大寺に、巨大な大仏を作ることが決定したんだけど、信用をすっかり失ってしまっていた彼のもとに、協力者はなかなか集まらなかった。
あいつが来るまでは。
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参考:
誰でもわかる聖武天皇!簡単にわかりやすく徹底解説【奈良の大仏と仏教に捧げたその生涯とは】 | まなれきドットコム (閲覧日 2019/11/30)